希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

微(ほろ)酔いの華梛ちゃんをホテルの部屋へ送り届け(偶然にも、僕と同じ大阪華月劇場の入る複合施設のホテルだった。)、僕は改めて、華梛ちゃんに会えた喜びを伝えた。
「祝(しゅう)が、言ったのよ。“大阪の劇場で、お芝居しているはずだから小狼に会えるかもしれない”って。」
「何時迄、日本にいられるの?」
「2週間の短期滞在許可が、あるから後、13日ね。」
それを聞いた僕は、リュックから封筒を取り出し、華梛ちゃんに渡した。
「この手紙だけは、出そうか迷ってたんだけど。大阪の千秋楽の2公演目、華梛ちゃんに来て欲しいなって。でも、無理かなって。」
「何処へ行くのも、簡単じゃないけれど我が儘(まま)を承認させる努力位、するわ。叶わないなら、祝(しゅう)に協力してもらうなり考えるわよ。それでも、ダメなら密入国…。」
「犯罪は、ダメ!!」
僕の言葉に華梛ちゃんは、少し驚いた顔をした。
「華梛ちゃんは、暗闇を優しく照らす月明かりみたいな人で…。だから…。」
“だから”の先を僕は、言う事が出来なかった。泡みたいに言葉が、消えたとほぼ同時に吐き気に襲われたからだ。
それを悟られない様に僕は、普段通りの僕を演じる。(普段通りの僕は、何度となく演じているので、違和感なく演じきれる自信しかなかい。)
「上手く言葉をまとめられないけど、僕の大切な人だから。何時も、味方でいたいし全力で、守りたい。」
「有難う。私も、同じよ。」
「次、一緒に出掛ける機会があるなら午前中から、会いたいな。遊園地とか、動物園とか…。」
僕の言葉を華梛ちゃんは、遮った。
小狼、顔色が良くないわ。私、無理をさせてしまったかしら?」
華梛ちゃんの一言で、僕の自信は一気に消えた。
「そんな事、ないよ。前に手紙で、書いたけど心が、病気で弱ってるから、体に色々な悪影響が出てて。それと、この間ちょっと無理しちゃったから、それの影響だと思う。」
今迄、交わした手紙の中で僕逹は、嘘偽りなく自分を曝(さら)け出していた。誰にも、言っていなかった様な事もお互いに知っている訳で。(僕の持病の件は、噛み砕いて子どもに説明するかの様な手紙をしたためて送っていたのだけれど。)
「会いたいなんて、祝に言ったから…。」
「会えるかもって、状況になったら僕も、華梛ちゃんに会いに行くと思う。メモ書きを受け取った時、初めて声が、聴けるって思ったら、すごく嬉しかったし。」
ベッドに腰かけると、僕は吐き気がマシになった気がした。
「座ったら、楽になったから多分、大丈夫。薬、飲んでも良い?薬の量が、多いから引くかもだけど。」
僕は、そう言ってリュックを開いた。何時でも、応急手当が出来る様に色々と、詰め込んだリュックの中身に華梛ちゃんは興味を示した。
「医師って、誰もが何時も、色々と持ち歩いているの?」
「どうだろ?他の医師に聞いてみた事が、ないからなぁ。僕が、色々と持ち歩いてるのは、応急措置をしなきゃいけない状況に成人する迄に102回程なったからで。」
その大半は、葵だった。それは、人が急に倒れた時の対応に僕が、慣れてしまった原因の1つだと思っている。
「リュックの中身の大半は、お守りみたいな感覚で持ち歩いてるんだ。ほとんどが、街のお店で手に入る物だし。聴診器は、葵…。あ、心友の形見のだけど。」
「会ってみたかったわ、聴診器の持ち主に。10年前に小狼を見付けられていたら…。」
「きっと、“会って欲しい”って、葵にに言ってたな。葵は、張り切ってスイーツを作っただろうね。お菓子作りが、趣味だから。」
服用する薬が、多いので1つずつ、確認しながら薬を飲み終わる頃には、僕の吐き気はすっかり、治まっていた。



~続く~