希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

大阪公演の初日、多少のハプニングはあったけれど、満員御礼の最高の舞台だった。
「さっき、小狼に渡して欲しいって、べっぴんさんからメモを預かったんやけど。」
劇場スタッフから、受け取ったメモには走り書きで、“劇場1階のスターボックスで待ってます”とだけ書かれていた。その文字に僕は、見覚えがあった。
劇場スタッフにお礼を言い、僕は夢を見ているのではないかと、頬を摘まんでみた。会いたいと、思い続けた種違いの姉に会える事が頬の痛みを感じても、俄(にわか)には信じられなかった。


劇場1階のスタボは、混んでいた。Lサイズのホイップクリームたっぷりのココアを注文し、僕は写真でしか、見た事のない姉の姿を捜した。
小狼、こっちよ。」
母に似た声を頼りに席へ向かう。そこには、姉の他に南野さんがいた。
「南野さん、その頭の包帯…。」
南野さんは、頭に包帯を巻いていたから、僕は驚いて尋ねる。
「この間、駅のホームで人命救助をした時にちょっと、ね。各メディア媒体で、ニュース沙汰になっちゃったし詳細は、小狼君も良く知ってると、思うけど。」
その言葉で、全てを察した僕はそれ以上、質問しなかった。
「今日、南野さんと華梛ちゃんに会えるとは、思わなかったな。」
大阪府警の特別捜査課に呼び出されたの。琥珀…、私のストーカーみたいなボディーガードの事で。」
「その説明、犯罪を犯したみたいに誤解されるから。」
「そうね。私、琥珀が常に傍にいるのが嫌で、仕方がなくて。それで、ストーカーみたいって言ったの。」
「何で、大阪府警に?」
「親戚の葬式に参列するのにこっちに来てて、ダンプカーに轢き逃げされたらしくて。担当になった刑事と、偶然のたまたま知り合いだったから真っ先に僕に連絡が、来たって訳。」
話が、進まないので南野さんが、説明してくれた。
「それで、琥珀さんは大丈夫なんですか?」
「奇跡的に生きてる。両足、粉砕骨折…他にも何ヵ所か骨折してるって聴いたけど。」
「両足、手術して骨がくっ付いてからのリハビリが、大変らしいので。ちゃんと、支えてあげて。元通りに動く迄にすごく時間が、掛かると思うから。」
「流石。医学の知識、すごいね。救急医って、皆そうなの?」
自分の専門領域以外の医学知識を深堀りしている医師なんて僕以外にいるのだろうか?考えてみたけれど、多分いないので僕は、否定した。
「救急医?」
「あ、小狼君の前職は医術師で…。」
「こちらの呼び方に慣れていないものだから、ちょっと考えてしまったのだけれど。教えてくれて、有り難う。」
品行方正という四字熟語を体現したかの様な姉。ニュース番組で、時々拝見している皇族の方々に似ていると僕は、感じていた。
「それから、忙しいのに付き合ってくれて有り難う。この後、祝(しゅう)は東京に戻るのよね?祝に今度は、何時会えるのかしら?」
「今、桜が丘警察署で抱えている事件が一段落したら、必ず会いに行くよ。国王陛下にも、お会いしたいし。」
そして、南野さんが僕に言う。
「本当なら、華梛ちゃんが帰国する迄、傍にいたいんだけど…。難事件になりそうな事件が、待ってるから今日中に東京に戻らないといけなくなっちゃって。」
「あの、無理しないで下さいね。傷口、開いちゃったら大変だから。」
「有り難う。あ、そうだっ。大阪府警の知り合いに教えてもらったお洒落なバーを予約してるんだった。小狼君の予定が大丈夫なら、2人で楽しんで来て。」
僕に名刺サイズのカードを渡すと、南野さんは帰って行った。



〜続く〜