希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

クリニックの処方薬が、効いたのだろう。僕の熱が、38℃台に下がると心身共に大分楽になった。
「今日は、有り難う御座います。僕の為に…。」
まだ、張れないけれど嗄(か)れそうだと思った声は、元に戻った様ですんなり言葉が、出た。
「王子の事を頼むって、雪也陛下との雇用契約更新の時に言われたからね。あ、その言葉がなくてもそうしただろうけど。僕、人の世話を焼くの好きだから。」
「あの、僕の病気の事…。」
「公に公表してないみたいだし、僕の口からは誰にも、言わない。」
南野さんの言動からは、嘘偽りが感じられなかった。
「僕って、そんなに信用ないかな?出会って、半年経つけどまだ心の距離が、遠い気がするんだ。」
無意識に真意を探っていた僕に南野さんが、言った。
「ごめんなさい…。」
南野さんに指摘されて、僕は気付いた。僕が、日本円で約1億の賞金首だと知られたくなかったのだと。
「多分、知られるのが怖かったから…。」
「何を?」
「僕が、賞金首だって…。」
僕の言葉に南野さんの表情は、変わらなかった。
「日本に来る前は、裏社会で暗殺を生業に生きてたんです。いまだに賞金懸かってるし、だから…。」
出来る限り、言葉をシンプルに。そして、正直に。
嘘を吐(つ)くと、その嘘を真実にする為の嘘を吐く。それは、嘘を見抜くプロである警察庁の人間にはじないだろうと、考えたからだ。
「言いにくい事を話してくれて、有り難う。」
「え、と…。」
南野さんの予想外の言葉に僕は、戸惑った。
「過ぎ去った過去は、変えられない。それよりも、今が大事だと、僕は思うんだ。だから、捜査中の事件の被疑者や逮捕した被疑者は別として、人の過去なんて気にしないな。」
似た様な事を以前、僕は葵に言われた事を思い出す。南野さんや、葵と同じ様な心持ちで、いられたならば僕はもっと、気楽に生きていただろう。
「そう言う僕も、過去に振り回されてた時期があったけどね。」
そう言って、南野さんは人間界にいる理由を僕に語ってくれた。



〜続く〜