希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

「1943年に某国にあった病院が解放された事を覚えてないか?」
「1943年って、僕生まれて…。前世の話?!」
前世の記憶なのに昨日の事の様に話すトッキー。前世の記憶を鮮明に語る事が、出来る人に僕が出会ったのは、前世迄を含めても多分初めてだった。(前世の記憶なんて、ないけど。)
「オレ、捨て子でさ。ド田舎の貧乏大家族の末っ子だったから。今日の食い扶持(ぶち)にも、困ってたみたいだったから口減らしに。保護されて、口実付けてそこに送られた。」
「良く覚えてるね、前世の事なのに。」
「てっきり、語らないだけで誰にでも、前世の記憶ってあるもんだと、思ってた。」
「僕は、現世で手一杯だから。普通の人は、大概そうだって。」
普通じゃない僕が、普通の人と唯一かもしれない同じ事は、前世の記憶が一切ない事だ。
「普通の人間は、ブチギレても髪の毛の色、変わらないからな。」
僕は、バスミュの合宿中に感情剥き出しで瑠樹にブチギレた夜を思い出した。トッキーと、ハニー君がいたのだ。
「それは、狐と人間のハーフだから、そうなるっぽいんだよね。何でそうなるのかは、知らないけど。」
「それでか…って、話を戻すけど。」
某国の病院というのは、山奥にあるストリートチルドレンを保護し、入院させる病院と言い張る施設だった。実際は、ストリートチルドレンを使い人権云々を無視して、人体実験していた施設だったらしい。
「そこが、アメリカ中心の連合軍によって解放され、消滅する日が来たんだ。スパイに感謝だよ。地獄から、解放されたんだから。」
そのスパイ=警備員のジェームズ・スミスと、若手女性医師のメアリー・ジョンソン(多分、どちらも偽名だろう。)は立場を最大限に利用し、この病院と言い張る施設の実態を外部に伝えていたらしい。
「オレは、謎の薬を点滴する実験の対象で。体、だるいし関節痛いし、高熱出るし、食欲ないしでヤバいなって。毎日、カルテっぽい紙に症状とかの記録はされるけど、治療されたっけかな?身体検査は、色々された記憶あるけど。」
「症状的には、インフルっぽいけど…。薬とか、治療とか病気の研究報告書とか、論文とか読んだ事、ないなぁ。そういう類(たぐ)いのは、専門の垣根を越えて色々と、読み漁(あさ)ったはずなんだけど。」
画期的な新薬の研究や、病気やその治療法を研究していた訳では、なさそうだ。成果が、あれば何らかの形で、公表されているはずだ。
「世に出せないって、事か。施設が、解放された日にオレを助け出してくれた人…警備員のジェームズ。その人に抱き抱えられた瞬間、覚醒した。」
「体力的にヤバくないか、それ。」
覚醒し、天使となる瞬間…。僕の場合は、体に力が入らなくなり、自転車に乗っていた僕は車道に倒れ込む形になった。
僕の覚醒の記憶は、そこで止まっている。何故なら、脳震盪を起こして気を失った僕に後方から走って来たバイクが、避けられずに突っ込んで来たらからだ。
「謎の薬を点滴されてなくても、ヤバかったと思う。オレ、まだ6歳だったし。覚醒するには、器が未熟過ぎだったって後から、ジェームズに言われた。」
「え、前世のトッキーが6歳?!普通は、思春期位らしいよ。それから、ジェームズ天使?!」
「ジェームズは、前世のオレの養父で指導係で、相棒。オレ、覚醒後、熱が下がんないから、生死を何日も彷徨(さまよ)ってさ。目が醒めたら、世界は闇だったんだよ。感覚を頼りに生きて、仕事すんの大変。」
「あー、確かに見えないって怖いよね。舞台上で、盲目の青年役を演じた時に思ったけど。」
僕は、大学2年の学園祭を思い出していた。
小狼って、本当にジェームズに似てる。絶対、ジェームズの生まれ変わりだよ。ジェームズも、ピーチって名乗ってたもん。」
「そんなに似てるの?」
「超が、付く真面目。超が、付く完璧主義者。超が、付くストイック。似てない所って、筋肉馬鹿じゃないのとクリスチャンじゃない事位、かな?後、基本小狼は雑食だけど、ジェームズは肉とか、魚が大っ嫌いで、絶対食べないの。」
“基本雑食”と、いう言葉を僕は否定しなかった。



〜続く〜