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今日は、7月7日。つまり、七夕。
2日間の練習のみで、パネルシアターの本番を迎えるのは不安だったけれど、僕も優美も、口にはしなかった。そして、事前に打ち合わせた通りに東都医科大附属病院の小児科病棟にある院内学級の教室へと僕と、優美は飛び出した。
「2人共、お疲れー☆」
「タクも、撮影係お疲れ様。」
タクこと、酒井拓人は同い年で、桜が丘学園中等部からの同窓生で学部は、違えども東都医科大を卒業している。
「これ、何処に貼ろうかな?せっかく作ったんだし、誰もが見られる所が良いよね。」
今日、参加した皆で作った短冊を貼り付けた模造紙を院内学級の教室前の壁に優美と、タクとで貼った。
「今日、七夕だっけな…。」
多分、独り言だろう。その言葉のした方に僕は、目を向けた。
「朴(パク)先生!!」
「会えるかなって、思ったら会えちゃった♪」
朴先生は、葵の主治医だった。葵が、唯一苦手だと、言った人物だ。
「また、息子自慢ですか?」
「毎回、息子自慢をする訳じゃないんだけど。デジカメのデータを整理してたら、現像してない画像が大量に出て来てさ。」
そして、現像した写真を見せてくれた。
「心霊写真が、撮れてたんだ。今日は、エイプリルフールじゃないから加工してないから。」
「ここ、トロピカルフルーツランドですね。」
「うん。ね、ね。これ悪霊だったりする?」
「悪霊じゃないと、思うんですけど。一応、この写真預かって、お祓いしときますね。」
「有り難う。お礼にこれを貰ってよ。」
朴先生が、くれたのは桜が丘商店街の3万円分の商品券。
「桜が丘商店街のガラポン抽選会で、当てたヤツだけど。」
僕の心は、実用性のある商品券を貰ったので踊り出していた。
「お祓い代が、商品券でも良いんだ。」
「今日は、特別なの。除霊とか、お祓いとかは基本的にタダ。」
「タダ?」
僕の言葉に優美が、驚く。
「僕にお祓いの依頼って、稀だから。出会っちゃう事が、多くて。」
僕は、僕の隣に現れた男の幽霊を無視して応えた。(優美も、完全に無視。)彼は、臨終間近な患者とその家族とを会わせる仕事を試験的にしているので、病院内の情報を常に握っている。
「もうすぐ、サクラミシタ先生が研究室に呼ばれるよ。」
僕が、反応する隙もなく、その院内放送が流れた。架空の人物で、ある“サクラミシタ先生”を研究室に呼ぶのは患者に大勢の患者が、救命救急センターに運ばれてくる事を悟られない為の隠語だ。
手の空いている職員は、この放送が流れると、速やかに救命救急センターに向かう仕組みだった。
「サクラミシタが、小狼を研究室に連れて来いってさ。」
医療用PHSで、誰かに電話していた朴先生が僕に言う。優美が、いるから隠語を使ったのだろう。
〜続く〜