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僕の部屋に住む男の子(幽霊)は、僕を追い出そうと必死だった。そして、今迄住んだ住人に対して、行ったであろう事を全てやり尽くしたのか3ヶ月後に彼は、音を上げた。
「もう、ネタ切れ?」
「何で、出て行かないんだよ…。」
「何でって、住み心地は良くないけど、家賃安いからね。」
僕は、男の子に優しく微笑んだ。彼と、話したのはこの日が、初めてだ。
「小狼って、変な奴…。」
「名前、覚えてくれたんだ。」
「変わった名前だから、覚えてただけだい。太郎とか、だったら忘れてたな。」
「そだ、君の名前。教えてよ。教えてくれないなら、イチロウ君って呼ぶけど?」
「おいらは、鈴木為吉。昭和7年9月1日生まれのチャキチャキの江戸っ子だい!!」
「為吉君、これからしばらく宜しくお願いします。」
僕は、かしこまって正座をすると、手を揃えて丁寧にお辞儀した。
「止めろやい、おいらにそんな事…。」
為吉君は、泣き出してしまった。僕は、彼が落ち着く迄、彼の頭を撫で続けた。
「おいら、68年幽霊してて、同居人に優しくされたの初めてで…。」
「今日、お祝いしよう。だからさ、買い物付き合ってくれない?」
「お祝い?」
「為吉君と、仲良くなった記念日だもん。祝わなきゃ。」
地縛霊を連れ出す事は、問題ないが霊を連れて、買い物するのは問題かもしれないが、気にならなかった。
「今夜は、カレーにしようか。」
「やったぁ!!ご馳走だね。」
カレーの材料を僕は、次々とスーパーで、仕入れた。
「食用蛙、入れないの?父ちゃんが、カレーライス食べた話してたけど食用蛙が、入ってたって言ってた。」
「入れないよ、代わりに奮発して牛肉を入れるから。」
「その釜の中身、飯だろ。白い飯、久々だな。」
「本当?!」
「だって、白米は贅沢だから、炊いてはいけないって母ちゃんが…。」
為吉君は、聞いてもいないのに自分の事から家族の事、友達の事や聞きかじった戦時中の政治経済の話等々…様々な事を話してくれた。僕は、しばらくその話の聴き手に回った。
「好き勝手に話したの、久々。生きてた時は、下手な事言えなかったし。」
「大東亜戦争をしてて、自由な時代じゃなかったもんね。」
「おいらの事、話したんだから次は、小狼が話す番。おいらの事を聞いといて、話さないってのはだな…。」
「話さないなんて、言ってないし。」
これから、始まる為吉君との同居生活。きっと、楽しいものになるに違いないと僕は、確信した。
〜続く〜