希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

千秋楽終わりの楽屋に大量のお握りを持って、ダニエルと杏奈さんが、現れた。

「仲直りしたの?」と、言う僕に杏奈さんが、頬笑む。

「ダニエル、杏奈さんみたいな人ってそうそういないんだからね。」

僕は、冷ややかな視線をダニエルに向ける。

「あれな、ちゃうねん。あん時は、何を言うても言い訳にしか聞こえへんやろから言わなかったんや。ウチの店に客として、よう来る弟の嫁はんには一切、手ぇ出してないで。」

声の調子や、態度からダニエルが、嘘を吐いていないと僕は思ったが、少しだけこの話を引き伸ばす事にした。

「身内に手を出すとか、最低!!」

「違うねん。弟が、ASLっちゅう難病になってもうてな。お互いに慰め合とったんや。陽気に振る舞っとる弟の前で、泣けんやろ?そういう訳やから、何もあらへん。」

今のダニエルは、9年前の僕と同じか、それ以上に辛いはずなのだがそれを感じなかった。

「ごめん。最低、呼ばわりして。ダニエル、たまに紳士だね。」

「そうそう、たまには紳士らしい事もしな…たまにちゃうわ、何時も紳士や!!」

見た目は、白人系の外国人なのに中身はコテコテの大阪人なダニエルのノリ突っ込みに僕は、毎度の事ながら脱帽してしまう。

「M'sバー自慢のお握り、皆で食べて。」

「杏奈さんも、ダニエルも今日は本当に有り難う!!後、感謝祭の件も。ウチの事務所、いっつも人手が、足りないって言ってるから、助かると思う。」

小狼君が、いないのは残念だけど。息子が、いるし。良しにしとくわ。」

「エディー、参加するの?」

僕は、杏奈さんの言葉に目を丸くする。

「主治医の先生の許可が、降りたら良いって、条件付きでちょっとずつ、仕事再開する事にしたみたい。大事な事は、事後報告なんだから…。息子が、病気になった事を知ったの週刊紙か何かのネット記事が、最初だったし。」

筆まめで、両親にも用があろうが、なかろうが急用でない事と、メールやlaneをしにくい事は、近況報告を兼ねた手紙で済ますと、言っていたエディーが当初は両親にも、隠していたなんて驚きだった。

「あ、息子が参加するのスタッフ以外にはサプライズだから。でも、当日不参加の小狼君には、沙汰があったってねぇ。SOULのリーダーだし。」

SOULのリーダーと、サブリーダーは年功序列で、決まった訳ではなく社長の見極めた適性で、決まったらしい。(初代のサブリーダーが、エディーだった。)

「僕が、手紙を見てないだけだと思う。多分、緊急性がないから、手紙かなって。」

「あ、それと!!将来的には、SOULに復帰したいって言ってた。」

エディーが、前向きになった事が僕は、嬉しかった。そして、3年前の春先に「SOULを脱退して、俳優も引退したい。」と、エディーに電話で相談された事を思い出していた。

まだ、「小狼しか言っていない。」と、言うエディーに東都医科大内のスタボで夜勤明けに会う事にしたのだった。 そして、痩せて別人の様に変わってしまったエディーに驚きつつも僕は、理由を聴いた。

その上で、たまたまコーヒーを買いに来た内分泌内科の医師(たまに名医として、テレビに出てる専門医。)を捕まえて治療に繋げたのだ。

小狼君が、甲状腺の病気かもって気付いてくれて、本当に良かった。色々な先生の所に行って、原因不明って言われてたみたいだから。」

あの日、僕が「内分泌内科の先生の所に行ってみた?」と、聴いた時にエディーは驚いた様な顔をし、「甲状腺の病気かも、しれない。」と、言うと人目を憚(はばか)らず僕の手を握りながら、泣き出した。

「僕も、甲状腺疾患に関する論文とか本とかを直近に読んでなかったら、疑わなかったかも。」

「感謝しても、しきれない位感謝してるわ。あ、今度普通にご飯食べに来てね。バーを名乗ってるけど、来月からは定食屋みたいなメニューも、始める予定だから。あ、バスミュの出演者皆で来てくれても良いのよ?」

「ウチの店、ここにいる全員は無理やろ!!それと、そろそろ帰るで。」

僕は、改めてダニエルと、杏奈さんに礼を述べ2人と、別れた。

~続く~