希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

南野さんは、とある事件のコードナンバーを口にした。僕は、瞬時に事件の概要を脳内から引っ張り出す。
それは、いまだに被疑者の数が特定されていないばかりか、目撃者すら出ていない迷宮入りしそうな未解決事件だった。
「その事件で、兄と兄の家族を亡くしてるんだ。犯人は、複数で人間界の日本国に逃亡したらしいって、噂を耳にして何時か、僕がそいつ等を探し出して全く同じ方法、同じ姿で殺してやるって思ってた。異界が、何でもありの無法地帯だった頃だから自然と、そう思ったのかもね。」
目の前にいる正義感溢れる南野さんにも、ドロドロした感情があったのだ。
「その為に必要だと、思った事や助言された事は、全てやったよ。戦闘武術を学ぶべく、人間界に留学したりね。それから…。」
南野さんの語る必要な事(必要なかったで、あろう事も含まれていた。)には、努力が詰まっていた。警察庁職員になるのは、難しい国家公務員試験に上位の成績で合格しても、採用枠がわずかな為に狭き門だと、聞いた事があったから尚更そう感じた。
「南野さんの努力を考えたら、僕なんかまだまだだな…。」
僕の独り言を南野さんは、聞き流してはくれなかった。
小狼君の方が、遥かに努力してると思うよ。日本語、素性を隠すのに必死に覚えたんでしょ?発音とか、言葉選びに違和感ないし綺麗だもの。」
南野さんが、僕の額と脇の下の解熱シートを貼り替えながら言った。
「そんな事、誰にも言われた事が、ないから返事に困るんですけど…。」
「今度、誰かに言われたらシンプルに“有り難う”で、良いんじゃないかな?それしか、思い付かないな。

「今後の参考にします。あの…。」
僕は、話をそらした事を詫びた。
「じゃ、続きをば。犯人の1人は、小狼君の協力で見付けたんだ。いつぞやの強盗犯が、それ。だけど、いざってなったら、ぶん殴る以上の事は出来なかった。同僚に止められちゃ、ね。」
「止められて、良かったです。さくらさんと、かえでちゃんの為にも。それにお兄さん家族も、復讐なんて望まないでしょうから。」
元暗殺者が、刑事に諭(さと)すのも変だろうけれども。
「そうだよね。何で、家族の事を考えられなかったんだろうね。」
南野さんは、目から鱗状態なので、僕の複雑な気持ちは伝わっていない様だった。


小狼、生きてるー?」
鈴花のこれを聞くのは、為吉君と暮らす様になってから初めてだった。神経性無食欲症と、正式に診断された後は最低でも、週に1度僕は、それを聞いていた。
「チャイム位、鳴らしてよね。毎回、毎回…。」
「良いじゃない。恋人…なんだし…。」
“恋人”という言葉は、2人の関係を表すには正しいはずなのに鈴花は、赤面していた。



〜続く〜