希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

「陸軍さんのお手紙、届けてあげたいから必死で、家族か親戚の手掛かりを毎日探してたんだ。やっと、見付かったよ。」
「本当?!」
岡山県倉敷市って、所に娘さんが住んでるみたい。住所は、親切な人が小狼に送ってくれるって、言ってた。」
僕も、陸軍さんの親戚縁者を探していなかった訳ではなかった。この街には、戦時中の事を知る地縛霊が少なくとも、100人以上はいるので、聞き込みを続けていた。(大多数が、東京大空襲の時に亡くなった人達らしい。)
それでも、成果がなかったの は僕が、街中で出会った戦時中を知る地縛霊達は、僕を警戒していたからだろう。更に人間不信に陥っている者や、記憶の一部又は、全部が欠落している者もいた為に聞き込みは、困難だった。
「有り難う。じーちゃんの無念を晴らせそうだよ。」
「陸軍さんって、又一郎さんの…?」
僕のじーちゃん=桜井又一郎。
「どーゆー訳か、小笠原諸島硫黄島にじーちゃんが住んでたらしくてさ。そこで、親しくなった陸軍兵士に託された手紙を家族か、無理なら親戚に届けたいって遺言書が、出てきちゃったもんだから。」
「遺言書ねぇ…。」
葵は、そう呟いたきりしばらく、黙々とたこ焼きを焼いていた。僕は、たこ焼きを焼く手が、しばらく止まったままだった。
たこ焼きを食べる事に集中しているかと、言えば皿の上のたこ焼きは、全く減っていない。
「直人、食欲ない?」
「あ、えっと…。ごめん、今日…。」
僕の事を気に掛けてくれる葵に僕は、言い訳をしようとしていた。
「無理しないで、良いからね。病気を治すの亀みたいなスピードでも、良いと思うんだ。」
何度か、葵に言った言葉を本人に言われる日が来るなんて、僕は思ってもいなかった。
「頭の片隅じゃ、分かってるんだけど…。実際問題、それが焦(じ)れったかったりするんだよね。」
「焦らないのって、なかなか難しいだろうけど…。斜に構えてたら、案外落ち着けたりするから。」
病気慣れしている葵の言葉は、説得力がある。
「それでも、ダメな時もあるけど。その時は、素直に感情を日記帳にぶちまけちゃうとか、趣味に没頭してみるとか…。焦りをストレスとして、溜め込まない様にするのが大事だよ。」
葵に言われると、僕は不思議と、素直に聴く事が出来た。それは、葵の経験に基づいたアドバイスだからだろう。
「後、何だっけ…?他にも、言おうと思ってたんだけど、忘れたから思い出したら、言うね。」
葵のアドバイスを聴き、僕は趣味という物が、ない事に気が付き趣味を探そうと、決めた。



〜続く〜