希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

8月1日、僕はミュージカルバスケのプリンス(通称バスミュと、言うらしい。)の出演者と、バスで茨城県に向かっていた。目的地は、葵の母方の祖父母の住んでいる久慈郡大子町の温泉宿。
宿の敷地内に体育館が、あり宿から、車で5分圏内に総合運動公園が、ある。学生等の運動部の合宿に最適な環境のその場所で、バスミュの合宿は初演から毎年行われているらしかった。
青葉のヲタク的な知識と、バスミュ経験者の豪太の話によると若手俳優の登竜門の1つと言われている人気ミュージカル。(少年漫画原作だけれど、登場人物がイケメンだらけなので、ファンのほとんどが女性。)オーディションの応募人数は、毎回多数。(豪太の合格した時は、ワイドショーの報道によると1万5千人から、キャストが選ばれたらしい。)
バスプリを良く知らず、青葉の話に興味を示さなかった僕が、オーディションを受けずにバスミュの主演に抜擢されるだなんて烏滸(おこ)がましい事、この上ない。


合宿初日は、顔合わせ兼バスケと、バスプリの基礎知識の講義だけだった。多分、油断させておいて明日からは、ハードな合宿に変わるのだろう。


「マジで、キツいわ。高校ん時の部活、思い出した。」
これは、バスケの強豪校帝東高校を卒業している都北信悟君の感想。本格的にバスケをしていた経験のある者は、大体似た様な事を言っていた。
僕みたいなバスケ経験は、体育の授業のみな者にとっては想像の斜め上か、それ以上にキツかった。
豪太は、“ハードな合宿”と言っていたけれど、僕は“地獄の合宿”だと、思った。本格的なバスケ経験者に付いていくだけで、精一杯だった。
「桜井君は、余裕そうだね。」
「そんな事、ないよ!!
体力には、少し自信あったけどその自信、消えちゃったしさ。基礎練習の段階から、予想以上にハードなんだもん。」
6日目の昼、僕は僕が、思った以上に早く音を上げた。学生時代なら、余裕綽々(しゃくしゃく)だったはずだ。
神経性無食欲症(俗に言う、拒食症)を完全に克服したとは言えないし(実は、未だに定期的に通院している。)、体力と筋力が、以前の状態に戻りきっていないからだろう。(7年前に僕を徹底的に調べた東都医科大の教授曰く、未だに人並み外れた身体能力を持ち合わせてているらしいのだが。)
小狼が、そんな事言うの初めて聞いたな。」
久し振りに聞く声に僕は、懐かしさを感じた。
「先輩と、仕事する日が来るなんて、夢にも思わなかったですけど。」
声の主は、桜沢はるか先輩だった。
「あ、脚本家デビューしてたの言ってなかった?その辺の話は、長くなるから今度、話すとして。代役、また引き受けてくれて有り難う。」
「オーディション受けてないのに人気漫画原作のミュージカルに参加出来るなんて、そんな事だろうとは薄々、思ってましたけど。」
「オーディションで、正規に決まっていたコが体調不良で、東桜医科大に入院してるみたい。体調不良の詳細は、知らないんだけど。」
そう言うと、桜沢先輩は僕に走り書きのメモをくれた。



〜続く〜