希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

9月1日。その日は、為吉君の誕生日。
僕と、葵とで密かにプレゼントを用意していたけれどそれは、サプライズの誕生日パーティーをする予定の夕食の時迄為吉君には、内緒。


サプライズ誕生日パーティーの計画にワクワクばかりは、していられなかった。 バスミュの稽古後に東桜医科大病院に入院している神山爽太君の元へ寄る事にしていたからだ。(桜沢先輩を介して、マネージャーさん経由で見舞いに行く日を事前に決めた。)
「直君が、会いたいって言ってるって、聞いた時びっくりしたんだけど、嬉しかった。」
僕が、見舞っている相手はエコレンジャーで、共演した彼だった。そして、エコレンジャーの現場で付けられたニックネームで、呼んでくれている。
「迷惑かなとか、色々考えたんだけど、爽ちゃんだったら会いたいって、思って…。」
僕の口からも、エコレンジャーの現場で呼んでいたニックネームが、自然と出た。ランドセルの似合わない程、背の高かった12歳の少年(当時、本当は中学生か、高校生じゃないかと思う身長だった。)は、21歳の垢抜けた青年になっていた。
僕が、桜沢先輩から走り書きのメモをバスミュの合宿中に貰ってから、1週間近く見舞いに行くか、悩んだのは取り越し苦労だった。それから、見舞いのマナーを守ろうと話題を考えた事もだ。
「バスミュの主演…、降りようと思ったんだ。」
爽太君が、僕が避けようとしていた話をし始めた。
「バスミュに出たくて、バスミュのオーディションで思いの丈をぶつけて…。6度目で、夢を掴んだけど手放そうって…。今の状態じゃ…。」
爽ちゃんの目から、涙が零(こぼ)れた。
「でも、手放さなくて良いって、言ってくれる人がいた。バスミュ愛の強い僕が、主演で良いって…。」
「爽ちゃんの大好きなバスミュを僕が、汚さない様にしなきゃ。ぶっちゃけ、バスプリってヲタク女子向けな気がしてたし、メンバーの一瀬青葉が熱烈に何度も、愛を語るもんだから好きじゃなかったんだけど…。バスミュを通して好きになる努力をしてみるよ。」
「有り難う…。代役が、直君だって聞いた時、嫉妬心が湧かなかったんだ。直君なら僕の憧れたバスミュを守ってくれるって、思ったから。」
爽ちゃんは、涙を拭い僕に微笑んだ。
「直君に会えたから、手術頑張れそう。うん、頑張る。」
「手術?」
爽ちゃんが、さらりと言った言葉を僕は、聞き返した。
「今年、2度目の肺気胸になっちゃってさ。重症だから、入院とか安静とか、言われて。治らないから、手術とか今朝、言われた。」
「僕、大変な時に来ちゃった…。」
「そんな事、ないよ。肺に穴が、空(あ)いてる事と動くと、ぶっとい管をぶっ刺してる左側の所が、めっちゃ痛い事を除いたら元気だし。」
“めっちゃ痛い”と、言う割りには苦悶の表情が、爽ちゃんには全くなかった。
「直君は、エコレンジャーの現場に何時も聴診器とか、色々持って来てたから相当な心配性だろうなって、普通にしてたんだけどバレなかったな…。」
「全然、気付かなかった。それから、僕は心配性じゃないよ。神社仏閣の御守り的な感覚で、持ち歩いてるだけで…。」
僕の一言に爽ちゃんは、驚いていた。



〜続く〜