希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

「今日は、来てくれて有り難う。」
今日の南野さんは、ジーパンとTシャツにエプロン姿だった。
「エプロン姿の南野さんが、新鮮過ぎて。ほぼ、スーツ姿しか見た事が、なかったですし。それに家事の腕が、プロ並み。」
「褒めても、何にも出ないよ。何てね♪プリンを作ったから、デザートにどうぞ。飲み物は、コーヒー牛乳で良いよね?」
南野さんは、僕以上に甘党だとこの日、初めて知った。
「プリンにあんこって、合うんですか?!」
「試してみる?意外と、美味しいよ。」
僕は、丁重にお断りした。代わりに産みの母親の生まれ故郷の事を南野さんに聴いてみる事にした。
「僕の一族は、王家に代々お仕えしているし僕も、そうだから下手な事を言える立場じゃ、ないんだけどね。」と、南野さんは断りを入れてから、話してくれた。そして、質問にも全て答えてくれた。
産みの母をジプシーの様な人だと、表現してだ。
「僕を産んでくれた母の事も、異界の事もほとんど何も、知らなかったから聴けて、良かったです。」
「蘭華妃殿下の事をジプシーに例えた事は、内緒にして。他に表現出来る言葉が、思い付かなかったからそう言ったんだけど、立場的に不味いから。」
そう言うと、南野さんの顔から笑顔が、消え真剣な顔付きになった。
「雪也(ゆきなり)陛下は、桜井君の事を蘭華妃殿下の産んだ父親違いの息子だと先週の生誕記念日に談話で発表されて。その所為(せい)で、王位継承云々(うんぬん)がどうなるか問題が、発生してるんだ。」
「前に元王族って、言ってませんでした?」
「そうだったんだけど、先月末からアメリカと、欧州連合を合わせた様な国になったんだ。人間界の色々な国を参考に憲法やら、法律やらなんやらを作ってさ。日本の戦国時代みたいな状態の治安が、最悪な地域だらけだった異界が、良くまとまったなって感心するけどね。」
憲法も、法律もないに等しかった異界が変わろうと、努力しているのは喜ばしい事だと、僕は思った。知らぬ間に王位継承云々の問題に巻き込まれた事は、理不尽だけれど。
僕の気持ちを察したのか、南野さんの表情が柔和になった。
「僕は、時に王子の鉾となり時に王子の盾となり…。堅苦しい主従関係を結ぶ上での儀礼は、以下省略。こういう時代にそぐわない伝統的な儀式は、個人的に好きじゃないんだよね。」
「じゃあ、友みたいな関係になれば良いんじゃない?おいらと、小狼みたいにさ。」
為吉君の提案に僕は、驚いた。
「ごめん!!僕、為吉君の事を友達って思ってなかったんだ。いたら、安心する存在でいるのが、当たり前になってるし…。近い言葉は、家族…かな。うん、家族!!」
「地縛霊に家族って、言った隣人は初めてだよ。引っ越しの挨拶に来た日に彼を見るなり、仲良くなりたいって言った事も、だけど。桜井君は、相当な変わり者だと思うよ。」
南野さんの言葉に葵が、言葉を続けた。
「その変わり者と、心友になった僕も変わり者って、事だね。」
「変わり者じゃなくて、どんな種族も文化の違いも、宗教の違いも受け入れる寛容さがある人だと思ってたけど?だから、困っていたら手を差し伸べてくれる本当の友達が、多いんだろうなって。」
葵は、褒められて照れたのを隠そうと、壁抜けして僕の部屋へと、消えた。
「友達案、採用するよ。お互いの事を知らな過ぎるし、深く知ってから始まる何かも、あるし。」
僕と、南野さんの考えが一致し、連絡先を交換しあった。


〜続く〜