希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。


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 cafe cloverを後にして、僕と李君は、さくらハウスに向かった。さくらハウスは、浅原園の作ったグループホーム児童養護施設で3棟(アパートの北側半径1キロ以内に点在している。)各4人の子と、2人の職員で構成されている2階建ての一軒家の様な建物だ。
 僕は、李君の言動や息遣い等、細部迄注意しながら、歩いた。
 「友達…初めて出来た。」
 「僕、初めて僕と、友達になりたいって言われたの陸と、海のお父さんだったな。」
 「そうなんだ…。」
 「うん。陸と海のお父さんが、片言の中国語と身振り手振りで、必死に会話しようとしてたから、僕 が日本語覚えなきゃ中国語を話せない人には、上手く伝わらないって気付いてさ。」
 その時の場景が、僕の脳内で鮮明に甦(よみがえ)る。
 「李君、昔の僕と少し、似てる。」
 僕は、そう言って笑う。李君も、僕に釣られたのか微笑んだ。
 「さくらハウスの人や、浅原園の人に言えない事とかあったら、僕が聴くからね。」
 僕は、カバンの中の名刺入れから名刺を取り出した。李君に渡した名刺の裏には、アパートの住所とアパートと、スマホの電話番号にスマホとパソコンのメアドを書いてある物だった。
 「あ、僕のアパートここの1階のカーテン閉まっている所だから。」
 「小狼の家、綺麗…。」
 「幽霊アパートなんて、近所の人には言われてたりするんだけど。実際に僕、幽霊と一緒に住んでるし。」
 「怖く…ないの?」
 「優しい幽霊だから、大丈夫。」
 
 
 「あ、おかえりー。」
 さくらハウスの庭で、洗濯物を取り込んでいた大里さんが李君に声を掛ける。
 「ただいま…。」
 「今、皆で短冊作ってっから、龍(ロン)も手伝って、くれたら嬉しいな。」
 大里さんは、さり気なく李君を遠ざけると僕に2階の部屋へ行こうと、促した。
 「麦茶で、いかっぺ(良い)?」
 僕は、丁重に麦茶を断り畳に正座した。大里さんは、李君の近況を話始めた。
 「里親、見付かりそうなんだ。」
 「んだ(そう)、星野文具店の星野さん夫妻が引き取りたいって、名乗りをあげてんだ。里親に相応しいか、見極めてるとこなだ。」
 「それで、cafe cloverの辺りにいたんだ。」
 「小狼君が、たまたま浅原園にいたから助かっただよ。有り難う。」
 「どう致しまして。」
 そして、僕は李君が、半年前の事を全て思い出した事を告げた。
 「本人が、言う迄知らない振りしとくべ。」
 「後、cafe cloverの南野兄弟と友達になったよ。」
 「ちくで、あんめ(嘘じゃない)?」
 「嘘吐(つ)いて、どうすんのさ。」
 「だよなぁ、大事(おおごと)だったからよ。」
 大里さんは、5歳の僕を知っている数少ないベテラン職員で、“小狼と、李君は似ている”と、感じているとも言った。
 「あの、僕が茨城弁理解出来るからって、茨城弁で話すのやめてくれません?」
 「いかっぺよ(良いだろ)、茨城弁分かんだから。」
 「そうですけど、標準語に戻った時の違和感が半端ないから、嫌です。」
 「標準語、話せるけど茨城弁の方が、良いんだよ。茨城の田舎育ちだから。」
 「出身、茨城県鹿島郡鉾田町…でしたっけ?海と、メロン畑しかない所でしょ?」
 「合併したから、“市”だけど。後、海とメロンしかないとか、鉾田市民に失礼だろ。涸沼(ひぬま)とか、北浦とかあるわ!!普通にスーパーとかで、買い物出来るわ!!」
 「ごめんなさーい!!」
 「オレ、やっぱ地元とメロン大好きだな。重度のメロンアレルギーになってなかったら、鉾田でメロン農家を継いでただろうなって、思うもん。今頃、イバラキングとアンデスメロンにクインシーメロンを作ってたかもね。」
 メロン農家の長男なので、大里さんはメロンの品種に詳しいし、メロンの食べ頃なんかもあっさり、見極められる。
 「メロンの話してたら、メロン食べたくなった。」  
 「死にたいなら、どうぞ。」
 「メロン、食べてお陀仏じゃ、洒落になんないし止めとくよ。」
 僕は、相槌を入れようとしたけれど突然、現れ僕に緊急事態を知らせに来た葵に驚いて言葉が、引っ込んだ。
 「あの、僕帰ります!!」
 引っ込んだ言葉の代わりが、これだった。
 「あ、もしかして用事あった?」
 「僕のアパートに霊能者を連れたテレビ局の人が、来てるみたいで追っ払わなきゃいけなくなったんで。」
 「気を付けて、帰るんだよ。」
 僕は、その言葉には応えずにさくらハウスを後にした。
 
 
 
〜続く〜