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「じゃあ、大学卒業パーティーは?」
「大学卒業したの4年前…。」
「引っ越し祝いパーティーは、どう?」
「幸子さんが、騒ぎたいだけでしょ?!」
豪太の隣に座り、僕をパーティーの口実にしようとしている幸子さんに僕は、言った。
「葵の分迄、人生楽しまなきゃ。葵は、それを望んでるわ。」
「だからって…。」
「良いじゃないですか、パーティー。」
パーティー好きの豪太と、意気投合した幸子さんはがっちり握手した。
僕と、豪太は帰る方角が、同じ(僕の住むアパートから、徒歩5分圏内に引っ越して来た。)なので興奮気味にパーティー好きに出会えた事を話す豪太を僕は、無視出来なかった。適当に相槌を打っていると、僕のアパートの前に小柄な女性がいる事に気が付いた。
豪太と、別れ僕は、精一杯その人に手を振った。
「未來ちゃん、どうしたの?」
僕は、手話付きで話した。昔取った杵柄で、僕の手は滑らかに言葉を紡ぐ。
「陸と、海が小狼さんの家に0点のテストを隠しに行ったみたいだから、謝罪をと思って…。」
「青葉に聞いたの?」
「たまたま、病院で会って、聞いたの。私、社会と算数、得意科目だから0点なんて、取った事ないしでショック受けちゃって。」
「僕の都合の良い時、見てあげるよ。」
「有り難う。私、小狼さんを頼ってばっかりで…。」
僕は、未來ちゃんの頭をポンポンした。
「ごめん。つい、ポンポンしちゃった。」
「葵も、ポンポンしてくれてた。本当なら、私がしなきゃいけなかったのに。」
そして、未來ちゃんは僕に言う。
「私、葵の顔とか声とか、仕草とかはっきりと、思い出せなくなってる。きっと、そうやって平凡に生きている人は、何人もの人々に忘れられて名前も、生きていた証しも消えちゃうんだなって。」
「都合良く、忘れたい記憶だけ忘れられたら良いのにね。」
僕は、笑って言った。
「記憶を全て、詳細に覚えてるって良い事ばかりじゃないから。あ、祝太(しゅうた)さん帰って来た!!お帰りなさい。」
「桜井君、丁度良い所にいた!!桜井君に書いてもらいたい書類が、あるんだ。狐族住民届っていう、面倒な書類なんだけど宜しくね。何時でも、良いから。」
「分かりま…。」
僕と、南野さんは同時に同じ方向を見ると、猛スピードで走り出した。
〜続く〜