希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

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  アルバムの中の写真には、色の抜けかけた物もあるけれど、葵の生きた証であり葵の成長記録だった。途中から、僕の成長記録にもなったけれど。
  「このアルバム、陸と海のお祖父ちゃんに預かっててって、頼まれて持ってたんだ。」
  「この子、小狼君?無表情だし、楽しそうじゃないね。」
  茨城に住む、葵の母方の祖父母の家に南野家と一緒に初めて、行く事になったのは小1の夏休み。その時の僕は、戸惑っていた。
  「初めて大お祖父ちゃんと大お祖母ちゃんに会ったのにどんな顔していたら、良いのか分かんないし、緊張してたしで無表情。」
  「僕も、初めて会う人とは緊張して、ドキドキするよ。」
  陸斗が、そう言ってページをめくった。集凡社の月刊アスリート専属カメラマンから、プレゼントされた写真も何枚か、混ざっていた。
  「お父さん、オリンピック選手の候補だったんだ。同世代の中で、日本一足が速かったから。」
  「小狼を除いて、だろ。小狼が、本気で走ったらあの世界王者のビルトだって、勝てないだろうな。」
  青葉が、言う。
  「能ある鷹は、爪を隠すの!!」
  最後の写真の葵は、詩織プロデュースで女装をしていた。好き好んで、女装したのではなく病院を抜け出すのに人々の目を欺く為の変装だった。
  「この人、お父さん?!」
  「意外と、似合ってるでしょ?」
  「何で、女の人の格好してるの?」
  「お医者さんに内緒で、病院抜け出したんだ。バレちゃったら、お医者さんに怒られちゃうから。」
  余命1ヶ月の人間と、中国旅行なんて担当医が、許可する訳がない。だから、事前に綿密な計画を練り上げ実行したのだ。
  「どうして、そんな事したの?」
  「中国旅行を計画してるなんて、言ったらお医者さんが、反対すると思ったんだ。お父さん、重病人だから。」
  「旅行、どうだったの?写真、ないけど。」
  「観光目的じゃ、なかったからね。お父さんは、僕が里帰りしないのは、良くないって思ったみたいで、旅行の計画を立ててたみたいなんだ。」
  「それで、無理してお陀仏じゃ、洒落になんないって。誰も、エディーと直人を怒んなかったってのも、腑に落ちないし。」
  青葉の言葉は、悪いけれどその通りだった。この計画に加担した全員が、お咎めなしだった。
 
 
 
〜続く〜