希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

駄文な小説を書いてます。

僕等の街で。

バックナンバー&過去作品:merumo.ne.jpをドメイン許可にして、00605453s@merumo.ne.jpに空メールをお願いしますm(__)m
 
又は、こちら:
 
 
 
  囲碁セットを部屋に運び込み、僕は入門書をパラパラめくった。
  「そんなので、理解出来るの?」
  為吉君が、聞くのも当たり前だった。
  「うん。何でか、分かんないけど丸暗記出来ちゃうんだよね。普通は、あり得ないみたいだけど。」
  「小狼って、化け物なんじゃないの?」
  「そうだよ。」
  「そこ、否定するものじゃないの?」
  「だって、本当だし。死んだ母は、日本人って言ったけど、正確には日本生まれの九尾の狐だし。」
  「化け物、訂正するよ。おいらも、化け物なんだって気付いたから。」
 
 
  そして、しばらくの沈黙。それを破ったのは、為吉君だった。
  「囲碁のやり方、覚えたんなら勝負しよう。おいら、囲碁知ってるから。」
  「そうなの?」
  「おいら、強いよ。」
 
 
  僕の脳内で、ゴングが鳴る。結果は、5戦して4勝1敗で僕の勝ち。
  「参りました。今日、始めたばかりの小狼に負けたー。」
  「囲碁、楽しいから趣味にしちゃおうかな☆」
  「本当に小狼囲碁初心者?初心者で、こんな手を打つなんて…。」
  為吉君が、碁盤の上の碁石を指差したり動かしたりしながら、NKHの囲碁番組のプロ棋士の解説ばりに分かりやすく解説してくれた。
  「小狼なら、専門家の棋士にも負けなさそう。」
  「まぐれでなら、ありそうだけど。」
  僕は、時計を見た。対局に夢中で、気付かなかったけれどお昼をとっくに過ぎ、午後4時近くだった。
  微妙な時間なので、為吉君にとって最高級品な果物のバナナを半分ずつ分け合った。
  「え、半分も貰っちゃって良いの?」
  「先生、してくれたお礼に。」
  「お礼って、多いよ…。」
  「少ないかなって、思ったのに。遠慮しないで、貰っときなよ。」
  バナナ半分を半ば強引に為吉君に押し付けて、僕はランニングウェアに着替え、入念にストレッチをした。
  「ちょいと、走ってくる。」
  「分かった、行ってらっしゃい。」
  僕は、部屋を出ると無心で、走り出した。
 
 
 
〜続く〜