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2005年10月8日[3]
全員が、食堂の席に着いた頃はるちゃんのご両親が、現れた。はるっちを見付けても、はるっちを叱らなかった。
「数値が、安定している事だしはるかのお友達の皆さんと、ご飯を食べたらって言おうかと、思ってたんだけど。必要なかったわね。」
「ああ、もうそうしているしな。」
そして、なるべく目立たない様にしていた僕に2人共気付いた様で、近付いて来た。
「ウチの警備員達は、皆真面目でね。君をブラックリストに載せてしまった様だが…。大丈夫、解除させセキュリティシステムも、作動しない様にさせたから。」
「ごめんなさい!!」
「はるきのしたい事、全部叶えてくれようとしたのよね。有り難う。」
僕は、悪い事をしたのに感謝されてしまい戸惑った。
「皆さん、今日は楽しんでいって下さい。」
2人が、消えると前菜の料理が運ばれて来た。
帰り際、「また…、来てくれる…?」と、はるっちが僕に言った。
僕は、返事に困った。(もしかしたら、またなんてないかもしれない。)と、思ったからだ。
「葵さんが、来てくださったから、ですかね。悔しいですが、笑顔ははるかお嬢様にも、引き出せ無かったんですよ。」と、吉田さんが言葉を添えた。
「約束は…。はるっちの右頬、出血してる。何処かにぶつけたりとか、した?」
はるっちの怪我を見付け、僕はさりげなく話題をそらした。
はるっちは、右頬に手を当て、「え…?!本当だ…。」と、驚く。
「はいっ、ガーゼハンカチ。清潔なヤツ、だから。未使用のヤツ、使い捨て用として何時も持ち歩いてるんだよね。」
僕は、怪我の応急措置位は出来る様常にカバンに色々入れて、持ち歩いていた。ちなみに直人は、常備薬・体温計・血圧計・聴診器なんかも持ち歩いていたりするのだが。
「有難う。」
「貧血で、ぶっ倒れる前に止めなきゃね☆」
「後々、面倒だから?」 「面倒でしょ?輸血やら、何やらで。」
はるっちは、軽くぶつかっただけでも内出血してしまうし、出血すると止血が、大変なのだ。
「まぁ、そうなんだけど。」
ガーゼのハンカチが、深紅に染まる。
「じゃ、僕達帰るから。」
後ろ髪引かれながらも、僕ははるっちに別れを告げた。
「うん♪また、来て。葵、お互いに頑張ろ☆」
はるっちと、僕は力を入れずに握手し、駅迄見送ってくれる事になったはるちゃんと桜沢邸を後にしたのだった。
「6年かぁ。」
帰り道、僕がポツリと言う。
「何が、だよ?」
ニノが、僕に聞く。
「はるっちのあの病気が、分かってから。」
あの病気…再生不良性貧血だと、僕が聞いたのが6年前。
「6年の間に色々と、あったよね。」
「はるちゃんの家に行くのが、難しくなっちゃったし。」
「私の家、セキュリティ厳しいのに忍び込んだりするからでしょ。」
「吉田さんに勝手に入る許可、貰ってたのを一部の警備員さんしか知らなかっただけ。」
僕が、桜沢邸でしでかした悪事を色々思い出し、はるちゃんと言い合った。ほとんどの事にはるっちが、絡んでいた。
「あ、葵有難う♪」
突然、はるちゃんが僕に言う。
「頑張ろって、はるきが、言ったでしょ。」
「言ってたね。」
「やっと、手術するっていう決心してくれたんだって、嬉しかったんだ。」
「手術?」
「忘れちゃった?前に私が、適合者だって、言ったけど。」
「おめでとー☆」
正直、すっかり忘れていたので後に日記を読み返した。
「うん、有難う。はるきに伝えとく。」
その会話から、どうしてそうなったのかはるちゃんが、僕の頬に優しくキスをした。
「今日で、諦めるから…。みっ君に改めてプロポーズされたから、幸せにしてもらうの。」
はるちゃんは、泣いていた。僕が、泣かせたみたいな図になってしまった。
「はるちゃんなら、何があっても、大丈夫だと思います。」
「本当?!」
「その強気な性格で、旦那を尻に敷いて旦那を操り人形にして…。」
「そんな事…しちゃおうかな♪みっ君、決断力とかないし。」
僕と、はるちゃんは笑い合った。
〜続く〜