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2005年10月8日(土)[2]
桜吹雪の劇の開演は、13時。一時帰宅して、cafe cloverに顔を出していたら講堂へ再び出向くのが、開演10分前になってしまった。
予想外な化け物か、何かの様なメンバーの反応に僕は多少戸惑った。しかし、直人と未來を見付けて、それは消えた。
「直人さん、私緊張しちゃって…。こんなに観客が、いるから…。私、トチるかも…。」
「大丈夫!!何か有ったら、フォローするからさ。」
未來は、ガチガチに緊張しているし直人も、珍しく緊張している様子だった。直人の声が、震えるなんて…。
「直人、緊張し過ぎ。もっと、楽に…。」
思わず、後ろから声を掛けてしまい、未來の台詞(せりふ)が吹き飛びそうになった。
「葵!!何で…?」
「何でって、僕も、桜吹雪のメンバーだし。」
「そうじゃ無くて、“病院、抜け出して来たの?!”って、意味の“何で…?”だったんだけど。」
病院を抜け出した事が、なければ言われなかったであろうこの言葉。僕は、スルー。
「直人、明日、何の日だっ?」
直人の質問に質問返しをした。
「明日?さ…。」
ドラマの撮影、初日の事を言おうとする直人を僕は、睨み付けた。
「葵の誕生日だろ、忘れてないって!!」と、直人は慌てて、言った。
「連休と、学園祭が重なったじゃん。だから、外泊許可貰おうと、頑張ってゲットして参りましたぁ!!誕生日ってのは、この間迄忘れてたんだけど…。」
僕は、少し事実と違う事を言ったのだが、直人に気付かれなかった。
「どうせ、友達記念日も、忘れてんだろ?」
突然の直人の質問。
「えっと…、12月…何日だっけ?」
それも、すっかり忘れていた。
「12月?!やっぱり、忘れてる。」
後に自分の手帳を読み返し、4月だと分かった。
「2人共、スタンバって、始まるから。」
直人と、未來言葉に押されて、舞台の定位置についた。緞(どん)帳が、上がる。緞帳が、上がり切り舞台が開演した。
「流石(さすが)、直人♪完璧人間は、集中力も、違うね☆」
劇が、終了すると僕は、直人を褒めまくった。
「乗り移ってるみたいだった…。」
はるちゃんは、心ここにあらずな感じで、「モデルは、曾祖父母なんだけど私が、大正時代にタイムスリップしたみたいだった。」と、付け足した。
モデルが、いたのは初耳だった。
「身分を越えた大恋愛…。素敵な話ですね♪」
うっとりしている未來にはるちゃんは、「劇の中だけでも、幸せにしてあげたかったの。」と、言う。
「本当は、駆け落ちして家を飛び出して…。子どもを身籠った曾祖母は、子を産むと見ず知らずの他人に預けて、曾祖父と心中しちゃったらしいの。その後、どうなったかは、分からないんだけど。」
「はるちゃんの半分は、優しさで出来てるもんね☆」
真実を知って、僕がはるちゃんに言った。
「葵、上手い亊言うねー。葵が、手伝ってくれて成功したし、パーッと打ち上げしよ!!葵の誕生日パーティーも、兼ねて家で♪」と、上機嫌になったはるちゃんが言う。
「でも…。」
「葵、あの件なら大丈夫だから。家を知ってるの4人だけだし、朝日平駅の西口に17時30分集合って事で。」
そういう訳で、桜吹雪のメンバー総勢32人。2000坪という広大な敷地に建つ、桜沢邸に乗り込む事となった。
〜続く〜