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2005年8月15日(月)[2]
「あの、お弁当食べていただいて、有り難う御座いました。」
未來ちゃんは、笑う。告白した件について、触れずに。
「帰ろっか。」
僕は、そう言って立ち上がるけれど、吐き気がしてまた座り込んだ。
「大丈夫ですか?」
「うん…。」
「もう少し、まったりしましょうか。」
情けないけれど、僕はその言葉に従った。情けないという気持ちから、涙が溢れる。それが、また情けない。
「ごめ…。」
「私、葵さんの事前から、知ってたんです。」
「え…?」
「私、4年前の冬休みに交通事故にあって。その時から、補聴器なしじゃよっぽどの大音量じゃなきゃ聴こえなくなって。」
僕は、静かに聞いていた。
「自暴自棄になってた時に主治医の先生から、葵さんの事を聞いたんです。お話、聞いてたら私って、精神的に弱いなって。」
「僕は、強くないよ。強がってただけ。」
「私、半年位ショックで、不登校してたし病院行く以外は、引きこもってたんです。」
“僕はメイドに恋をした”のキヨ子そのままな純真無垢な未來ちゃんからは、全く想像出来ない。
「何か、意外。」
「桜井さんの方が、意外じゃないですか?不真面目な人って、思ってたら人一倍、演劇に熱い人だったから。」
「そう?直人、最近仕事が多忙だから中々来られないんだよ。」
「俳優さん、ですもんね。」
直人は、只今劇団蒼風(あおかぜ)の“僕が、恋する日曜日。”の絶賛上演中の合間を縫って演劇ド初心者の未來ちゃんと、演劇初主演な僕の自主稽古に付き合ってくれている。
「あのさ、告白の件はやっぱり、保留にさせて。ダメ、かな?」
「ダメじゃ、ないです。むしろ、嬉しいです。」
「有り難う。」
僕は、笑顔で答えた。
神様、2つだけ願いを叶えてくれるのならば、僕に勇気と希望を下さい。それは、大きくなくても構いません。暗闇に射し込む一筋の光の様な、小さな物で構いません。
日記を書きながら、僕は本気で、そう思った。
〜続く〜