希乃子の小説、読んで下さいm(__)m

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愛と勇気と時々希望を持って

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2005年6月2日(木)[3]
 
 
 
 「分かった、練習付き合うよ。」
 直人が、折れる。
 「直人、大好き撚」
 僕は、思わず直人に抱き付いた。
 「ちょ…。」
 直人は、ニノから受け取った照れ隠しに台本をめくった。
 「あ、出演者と役名書いてある。」
 桜沢先輩の手書き文字で、表紙を1枚めくった所にキャストと役名とが、書いてあった。
 「ねぇ、黒川ミクさんかな?それとも、ミキさん?こんな人、いた?」
 直人が、僕に聞く。
 「附属のコじゃない?伝統で、毎年オーディションして、先輩が附属高校の人を引っ張ってくるじゃん。」
 桜吹雪の旗揚げ時から、附属高校の子をオーディション形式で引っ張って、劇に出演させる伝統があった。
 「附属のコかぁ。可愛いコなら、口説いちゃ…っつ!!何?」
 「ゆ…直人、ダメ!!後々、面倒臭いから。」
 直人は、ナンパしたり可愛いコを口説いたりするタイプではない。だから、何時の間にやら大人な雄輔さんに代わった様だ。
 読み合わせは、ドキドキすると、直人が言っていたのを思い出す。僕の場合は、ドキドキ半分ワクワク半分だった。
 「あの、南野葵さん…ですか?」
 急に女性に話し掛けられ、僕はびっくりする。
 「そうですけど…。」
 ビックリした拍子に敬語になる僕。
 「あの、私、黒田未來(みらい)です。宜しくお願いします。」
 未來ちゃんの第一印象は、“清楚”という言葉が、ぴったりの女の子。黒髪ストレートの三つ編みに王道の赤いタイのセーラー服。そんな制服姿が、良く似合う小柄な女子高生がそこにいた。
 「あの…、昨日いなかったみたいだから。」
 馴れない場所に人。未來ちゃんの緊張が、伝わってくる。
 「宜しくね♪僕、迷惑掛けまくると、思うけど…。」
 そんな未來ちゃんに僕は、笑顔を向けた。
 「私こそ、ド素人だから、迷惑掛けちゃうかも。それに…。」
 未來ちゃんが、不安がっているのが分かる。
 「それに?」
 「私、耳が聞こえないんです。ちゃんと、発音出来てますか?」
  聴覚障害は、言語の獲得後の後天的な物なのだろう。聞き取りにくい言葉は、1つもない。
  僕が、「大丈夫、全然綺麗だよ。」と、自然な手話付きで言ったので、未來ちゃんは凄く驚いた顔をした。言語表現の1つとして、手話を使いこなせる人が少なく、附属高校にはいないだろうから無理はない。
 「早口で、分かんなかったら、訳すから言って。」と、僕は付け足した。
 「有り難う御座います。」
 そこで、初めて未來ちゃんは、笑った。
  「自己紹介云々は、それ位で…。二宮君に聞いたけど、昨日サボった理由が、納得いかないわ。本当の事を吐いて、もらいましょうか?」
  桜沢先輩が、怒ると怖い。
  「朝日平で、迷子になりました。貧血起こしました。直人に助けてもらいました。大学、来ました。病院行きました。」
  「何で、連絡くれないのよ?」
  「桜吹雪の集まりを忘れてて。」
  「皆に言わなくちゃいけない言葉は?」
  「ごめんなさーい!!」
  「許してあげなよ。」
  各務(かがみ)さんの一言で、桜沢先輩の怒りは一応、おさまった。
  肝心要(かなめ)の読み合わせはというと、無事に終わった。早速、台詞(せりふ)を明後日迄に覚えるという宿題が出る。台本の台詞の多さに溜め息をせずには、いられない。
  「私、頑張れるかな?」
  不安がっている未來ちゃんに僕は、「頑張るしかないよ。」と、言った。
  「葵、今日はとことん付き合うよ。」
  直人の優しい一言に僕は笑顔で、「有り難う☆直人、大好き撚」と、答えたのだった。
 
 
 
〜続く〜