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2001年3月1日(木)
「はるちゃん、卒業おめでとう!!」
僕は、笑顔ではるちゃん…桜沢先輩に言う。
「有り難う、葵。」
普段生徒会のメンバーと、旧校舎に部室を構える文化部のメンバーしか来ない旧校舎。僕は、はるちゃんに呼び出されてそこにいた。
はるちゃんには、両親の勝手に決めた許婚(いいなずけ)がいた。はるちゃんと付き合っていたのは、“従兄弟(いとこ)と、結婚したくない!!”と、いう理由で彼氏探しをしていたはるちゃんに捕まったのが始まりだった。
「あの、話って…?」
「私、はるきの影武者みたいな存在だって思ってた。だから、従兄弟となんか結婚したくなかったの…。」
涙を堪えて、はるちゃんが言う。
「だけど、それは違うんだって気付いたの。今迄、振り回しちゃってごめんね…。」
「振り回されたなんて、思ってないです。楽しかったですし。」
「私もよ。私、葵と別れても、何かと頼っちゃうかも…。」
「愚痴とか、聞くし。僕達、友達でいましょうよ。」
「そうね。」
僕は、はるちゃんの幸せを願っていた。僕から、言おうと思っていた言葉を先に言われたけれど、これで良いとその時は思た。しかし、彼女の本心ではないだろうと今は、思う。
「桜沢先輩、僕行きますね。」
「うん、南野君元気でね。」
僕と桜沢先輩は、笑い合って別れた。
旧校舎を出ると、桜沢先輩のお父さんに出会った。会釈をして、立ち去ろうとする僕を彼は僕の腕を掴んで、呼び止めた。
「娘の我が儘に付き合ってくれて、有り難う。」
感情の全く感じられない言葉の後に持っていた鞄を開く。
「50万ある。君の治療費の足しにしたまえ。だから、娘とは別れてもらいたい。」
世にいう手切れ金というヤツだ。
「そんな物、入りません!!」
「固い事、言わずに。」
「お金で、何でも解決出来るなんて、思わないで下さい!!」
僕は、そう言い残し彼の元を離れた。
後に僕の作ったケーキ、“はる”を食べたらしい彼が直々に謝罪に来た。
〜続く〜